マンガでわかる薬薬連携 地域連携を活性化する仕組み
IT企業の社長であり、勝連病院(沖縄県勝連町)に勤務する現役医師の石松宏章先生著「マンガでわかる 薬薬連携 地域連携を活性化する仕組み」が3月25日に発売されました。なぜ「薬薬連携」を本書のテーマとして取り上げたのか、現在の「薬薬連携」の問題点はどこにあるのか、その解決法は何か、本書をどんな人に読んでもらいたいのかなどについて石松先生にお話をお聞きしました。
(インタビュー:日経メディカル開発)

著者

石松 宏章氏 医師、Dr.JOY株式会社 代表取締役社長
石松 宏章
医師、Dr.JOY株式会社 代表取締役社長
1984年大分県生まれ。大分上野丘高校、東京医科大学卒業。医学部時代に学生医療支援NGO-GRAPHIS-を立ち上げ、リーダーとして活動を牽引。カンボジアの無医村に小学校と診療所を建設。卒業後は、東京女子医科大学病院で研修医会長を務め、2012年に沖縄の勝連病院に内科医として赴任。MR担当窓口を担当した経験から病院と製薬企業における旧態依然の慣習を改革することを決意。2013年11月にDr.JOY株式会社を創業。

「薬薬連携が順調に進まないのはなぜ?」
疑問が執筆のきっかけに

---石松先生は現役の医師でありながら、IT企業を立ち上げて経営もされていますね。今回、なぜ、「薬薬連携」をテーマにした本を書かれたのでしょうか。

石松 僕の会社(Dr.JOY)が提供しているITサービスの中に、病院薬剤部で好評を得ているものがあります。そのため薬剤師の先生方と話したり薬学系の学会を訪れる機会が多いのですが、学会に行くと「薬薬連携」がテーマの発表がたくさんあるでしょう?それがあまり順調に進んでいるようには見えなくて。「なぜだろう」と疑問に思ったのが「薬薬連携」について考え始めたきっかけです。

医師は外来で患者さんを診察して、診断し、薬を処方します。しかしいくら病院で検査をして、処方せんを書いても、それで患者さんがよくなるわけではありません。患者さんが薬を正しくしっかり飲んでくれて、初めてアウトカムが出てくるわけです。

患者さんに薬が届く最後の段階「ラスト・1マイル」について改めて調べてみると、調剤薬局と病院薬剤部の連携にはいろいろと課題があることがわかりました。それを訴えかけたいと思って本書を書きました。

---本書では、調剤薬局や病院薬剤部の様子がマンガで、とても詳細に描写されています。どのように取材されたのですか。

石松 大学時代、僕はカンボジアの無医村に診療所を建設するボランティア活動をしていたのですが、そのNGOのメンバーの1人だった薬剤師とその友人などに協力してもらいました。複数の薬剤師からじっくりと話を聞きました。

---「薬薬連携」について改めて調べてみて、新しい発見はありましたか。

石松 「こんなに非効率だったのか!」と改めて思ったのは、調剤薬局から病院への疑義照会のフローです。調剤薬局から病院薬剤部に電話が来て、処方医に連絡が来るというイメージは何となくあったのですが、実際には薬剤部から病院事務職員、診察室の看護師、そして処方医へと連絡が回っていることが多いと分かりました。その間、患者さんは調剤薬局で待たされてイライラしていると。

あとは、外来で抗がん剤を初めて処方された患者さんの不便でしょうか。価格が高い抗がん剤などはすべての調剤薬局が在庫しているわけではありませんから、患者さんは薬がある調剤薬局を探さなければなりません。どの調剤薬局がその薬を採用しているかを、病院がある程度把握していれば、患者さんに「○○薬局と○○薬局にありますよ」って教えてあげられるのにと思いました。斡旋ではなく、情報提供としてなら問題ないわけですからね。

薬薬連携の根本的な問題は
病院と調剤薬局の「情報の非対称性」

---現在の薬薬連携の、根本的な問題はどこにあると考えていますか。

石松 いろいろあると思うのですが、1つは「情報の非対称性」だと思います。

---病院と調剤薬局がそれぞれ持っている患者情報が違う、ということですね。

石松 ええ。調剤薬局では処方せんを持ってきた患者さんに投薬・指導するわけですが、その際、診断名、既往歴、飲み合わせが悪かった薬など病院が持っている患者情報の全てが分かってはいないですよね。なので調剤薬局薬剤師は、改めて患者さんから情報を聞き出さなければ良い指導ができません。患者さんも2度同じことを聞かれて、うんざりしてしまいます。

一方、病院側も、調剤薬局が持つ患者情報をすべて持っているとは言い切れません。「病院の先生(医師)が怖くて言えなかったんだけど…」と、患者さんが調剤薬局薬剤師に初めて話してくれる情報もあるわけです。調剤薬局がその情報を病院に報告しなければ、やはり情報の非対称性が生まれます。もちろんトレーシングレポートなどで積極的に情報提供している調剤薬局もあるでしょうけれども。

---どのような道筋でこの問題は解決に向かうと考えていますか。

石松 調剤薬局が得た情報を病院としっかり共有する方法としては、まずはITシステムを導入して、調剤薬局薬剤師がトレーシングレポートを送りやすくすることです。病院側では、調剤薬局から送られてきたトレーシングレポートの内容を自動的にPDFにして、様々なベンダーの電子カルテに簡単に読み込めるようにすればよいと思います。この方法でかなり改善できると思います。

対して、病院が持つ情報を調剤薬局とすべて共有することは、現状ではかなり難しいと思います。最終ゴールは病院の電子カルテの情報を、調剤薬局薬剤師も閲覧できることでしょう。でも仮に今、調剤薬局から病院に「カルテを全部見せて」と言っても、なかなか実現しないと思います。病院側にインセンティブがあまり働きませんから。

ただ、薬薬連携が進めば進むほど、「次は患者さんのために何をしようか」というディスカッションが深まっていくと、僕は考えています。いきなり最終ゴールを目指すのではなく、今できる連携を活発にして病院と調剤薬局が相互理解を深めていけば、最終ゴールに近づくのではないでしょうか。

薬薬連携に関わる若い薬剤師にぜひ読んでほしい

--病院と調剤薬局が相互理解を深めるためには何が必要ですか?

石松 僕はオフラインの対面コミュニケーションがすごく大切だと思っています。古典的なコミュニケーションかもしれませんが、やはり一番連携が深まるのは「対面」です。

一方で、「対面」を補完する連絡ツールも有用です。ただ、薬薬連携に関わるメンバー全員に「facebook」や「LINE」など一般向けSNSの使用を強要することはできないので、専用のツールが必要になると思います。僕の会社が提供しているITサービス「Dr.JOY」にも、薬薬連携に関わるメンバー間の連絡機能が備わっています。ちょっと宣伝になってしまいますが(笑)。

---最後に、本書をどんな人に読んでもらいたいですか。

石松 まずは若手の薬剤師です。現場で実際に疑義照会を担当している若手の調剤薬局薬剤師、病院薬剤師に本書を読んでもらい、「これ、あるよね」「こういった課題、解決したいよね」と話し合うきっかけにしてほしいです。その狙いもあって、ビジュアルでわかりやすい「マンガ」という表現手段を用いました。

それから若手の薬剤師を後押しする立場にあるベテランの薬剤師にも、もちろん読んでほしいです。さらに外来を担当している医師にも、こういった課題があることを知ってほしいですね。日本の医療の中に、「薬薬連携の課題を解決したいね」という流れを作りたいのです。

本書が、次の世代を担う若い薬剤師が薬薬連携を推し進め、患者さんによりよい医療を提供していくうえで一助になればいいなと思っています。